聞き手・富田洸平
英国の教育専門誌が昨年発表した世界大学ランキングで上位200位に入った日本の大学は、韓国6校に対し東京大と京都大の2校でした。政府は2013年に「今後10年間で世界大学ランキングトップ100に10校以上を入れる」という目標を掲げましたが、達成にはほど遠い状況です。日本の大学の研究力は現状どうなっているのか。課題はどこにあるのか。論文数など様々なデータを使い、大学の研究力を分析している豊田長康・鈴鹿医療科学大学長に話を聞きました。
論文数、先進国で日本だけが停滞
大学ランキングには誤差があるので、細かな順位の変動は気にしなくていいでしょう。しかし、全体としては、日本の大学はわずかな数しか上位にランクインしておらず、日本の大学の競争力が低下していることも反映しています。また、ランキングが公表されることで世界の人々からの評価は大きく左右され、留学を希望する学生にも影響を与えます。両方の意味でランキングは無視できません。
ランキングは教育や研究、論文がどれだけほかの論文に引用されたかといった基準で評価します。私は、大学の研究力を判断するには、論文の量と質を見ることが最も有用だと考えています。日本は、その量と質、ともに低迷しているのが現状です。
例えば、人口あたりの論文数を見ると、ほかの先進国が論文数を増やしているなか、日本だけが停滞して引き離され、現在30位以下と、とても低い順位になっています。
学術誌に掲載された論文の引用回数を基に算出する「インパクトファクター」という学術誌を評価する指標があります。この指標の上位4分の1に入る学術誌に掲載された米国、英国、カナダ、フランス、ドイツ、イタリアの論文数の平均に対する日本の割合は04年から急激に下がり、12年間で40%低下しました。研究力が落ちたかどうか評価するのは難しいですが、少なくとも各国との比較で日本の研究競争力は落ちています。台湾も競争力が落ちた時期があります。13年から6年間で30%低下しました。
研究従事者と時間の確保が大事なのに
論文数は、研究時間が確保された研究従事者の数と相関しています。研究従事者数を増やした国では、論文数も増えていますが、日本は従事者が減少し、停滞しています。
私の分析では、日本の研究競…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル